000パンチストローク(%t)せん断時間(ms)図7 最高温度を記録した被加工材の温度上昇線図(t=7.8mm軟鋼板、Cl=0.3mm、クランクプレス使用)(柳原、斉藤、中川)出所:プレス加工データブック(日刊工業新聞社)図6 被加工材の上昇温度の等温線(t=7.8mm軟鋼板、Cl=0.3mm、クランクプレス使用)(柳原、斉藤、中川)出所:プレス加工データブック(日刊工業新聞社)H:0.24m/sL:0.12m/s図8 各被加工材のプレス打抜き中の切刃平均温度(柳原、斉藤)出所:プレス加工データブック(日刊工業新聞社)粗大炭化物50℃100℃130℃100℃50℃100℃150℃100℃200℃200℃50℃100℃110℃110℃200℃パンチストローク28%tパンチストローク35%t切刃平均温度(℃)400せん断速度}300200100(Al1.17t)(Cu1.20t)(Bs1.18t)(BsPb1.21t)(SUS1.0t)上昇温度(℃)60040020020580206015401010025硬さ(HRC)68666462605856545250DC53通常使用条件:>62HRCSKD11通常使用条件:60HRC100200300400焼戻し温度(℃)図9 冷間ダイス鋼の硬さ出所:大同特殊鋼(DC53:SKD11改良鋼)粗大炭化物500図10 SKD11ミクロ写真出所:大同特殊鋼㈱図12 SKH51ミクロ写真出所:大同特殊鋼㈱図11 DC53(SKD11改良鋼)ミクロ写真出所:大同特殊鋼㈱図13 DRM2ミクロ写真出所:大同特殊鋼㈱■事例3SKD11でせん断抵抗の大きい加工をしたところ、パンチ摩耗がはやいせん断抵抗が大きい場合、加工熱によりパンチ素材がなまり、摩耗がはやくなる場合があります。これはパンチ材質にSKD11を使用している場合に多く発生します。図6・7は、板厚7.8mmの軟鋼板、クリアランス0.3mm(板厚の4%)で加工した場合の被加工材の上昇温度を示します。図8は、被加工材の違いと加工速度の違いによる切刃平均温度を示し、これらによるとパンチ温度が300度を超えることは条件によりまれに発生します。通常、SKD11は200度の低温焼戻しで使われることが多く、パンチ温度が300度近く上がると焼きなましされて硬度が低下し摩耗が早くなります。対策として、スタンピングオイルにより充分に冷却する方法がありますが、高温焼戻しで使用するSKD11改良鋼への変更も有効となります。図9はSKD11改良鋼の焼戻し曲線で、この材料へ変更することでSKD11よりも硬い62HRCが得られるとともに、PVDコーティング(処理温度500度前後)も母材が変化することなく処理が可能となるメリットがあります(パンチ工業製品は高温焼戻しをするSKD11改良鋼を使用しています)■事例4製品精度が高く、微細なバリやせん断面の異常が問題になるこのような事例は刃先部分の微細な欠け(チッピング)により発生し、刃先部分に存在する『粗大炭化物』の欠落が原因であると考えられます。パンチに使われる工具鋼には非常に硬くてもろい粗大炭化物が、図10~14のように存在します。図10はSKD11、図11はSKD11改良鋼であるDC53のミクロ写真で、両写真ともに白い部分が炭化物となります。これを見るとSKD11よりもDC53は炭化物が微細で、チッピングに対して優位な材料であることがわかります。また、図12はSKH51、図13はマトリックス型ハイスDRM2、図14は同じくDRM3のミクロ写真となり、この写真では黒い部分が炭化物となります。マトリックスハイスはハイス組織から粗大炭化物を取り除き、基地(マトリックス)のみとすることで高靭性化したハイスで、価格面で粉末ハイス鋼よりも優位であることより本事例のような問題では良く使われる材料です。SKH51で本事例のような問題が発生した場合は図4(パンチの材質選定表)を合わせて参照いただき、チッピングが問題の多くを占める場合は炭化物がより微細なDRM2、チッピングと耐摩耗性を両立したい場合はDRM3という選択が有効になります。1155DC53図14 DRM3ミクロ写真出所:大同特殊鋼㈱SKD11
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